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レーシックとICLってどっちがいいの?それぞれの手術内容や費用、メリット・デメリット、向いている人について違いを比較しながら解説
今日、日本国内で行われている代表的な屈折矯正手術に、レーシック(LASIK)手術とICL(眼内コンタクトレンズ)手術があります。この記事では、視力矯正手術を受けようか検討している人に向けて、レーシックとICLの手術内容や特徴、かかる費用、それぞれのメリット・デメリット、向いている人について、違いを比較しながら解説します。
最終更新日:2025/9/26

レーシックとICLの違いを比較

レーシックとICLは、それぞれ得意とする領域が異なります

レーシック(LASIK)は、角膜にエキシマレーザーを照射して形状を変え、網膜に正しくピントが合うよう屈折率を調整する方法です。小さな度数の微調整が可能で、軽度の近視矯正に向いています

また、レーシックの類似手術には、武道や格闘技、ラグビー、アメフトといった激しい衝撃を伴うスポーツをする人でも受けられるLASEK(ラゼック)などもあります。

一方、ICL(眼内コンタクトレンズ)は、強度近視の矯正に適しており、大きな度数を改善するのが得意です。

ICLは、レーシックと異なり角膜の形状に変更を加える手術ではないため、レンズを取り外すことで、手術前の目の状態に戻すことができます。

ここでは、それぞれの治療方法について、施術の流れや適応条件、費用まで詳しく解説します。

レーシック(LASIK)ICL(眼内コンタクトレンズ)
手術内容角膜にレーザーを当てて、角膜の屈折異常を矯正目の中に小さなレンズを入れて、視力を矯正
矯正範囲中程度近視(-3.00D以上-6.00D以下)強度近視(-6.00D以上 ※3)
推奨年齢(※1)18歳以上21〜45歳
手術費用相場35万円(※2)66万円(※4)
メリットICLと比べて、リーズナブルな費用手術後も必要に応じて取り外しが可能
デメリット・角膜を削るため、一度手術すると元に戻せない

・術後しばらくはドライアイになりやすい

目にレンズを入れるため、格闘技などの激しいスポーツには不向き
向いている人軽い近視の人・強い近視の人

・レーシックの適応検査で不適となった人

・すでにレーシック手術を受けている人

※1 日本眼科学会によるガイドライン上での推奨年齢(適応可否は医師の判断による) 

※2 東京都内のレーシック手術を行っている施設(14院)の平均費用:343,057円(両眼・税込 当社調べ 2025年8月調査時点)

※3 -3D〜-6Dおよび -15D以上は慎重に判断。実臨床の上限目安は-18D(適応可否は医師の判断によります)

※4 東京都内のICL手術を行っている施設(34院)の平均費用:656,410円(両眼・乱視なし・税込 当社調べ 2025年8月調査時点)

レーシック(LASIK)の特徴

レーシック(LASIK)は、レーザーを使った屈折矯正手術の1種です。屈折矯正手術とは、遠視・近視・乱視といった眼の屈折異常を改善し、眼鏡やコンタクトレンズへの依存度をなくす、もしくは減らすために行う眼科手術を指します。

屈折矯正手術は、エキシマレーザー手術、有水晶体眼内レンズ手術、SMILE(Small Incision Lenticule Extraction)の3つに大別でき、エキシマレーザー手術の1種がレーシック(LASIK)です。(※)

※ 日本国内で実施されているエキシマレーザー手術には、LASIK(レーシック)、PRK(ピーアールケー)、LASEK(ラセック)、などがあります。

手術内容角膜にレーザーを当てて、角膜の屈折異常を矯正
矯正範囲中程度近視(-3.00D以上-6.00D以下)
推奨年齢(※1)18歳以上
手術費用相場35万円(※2)
メリットICLと比べて、リーズナブルな費用
デメリット・角膜を削るため、一度手術すると元に戻せない

・術後しばらくはドライアイになりやすい

向いている人軽い近視の人

※1 日本眼科学会によるガイドライン上での推奨年齢(適応可否は医師の判断による)

※2 東京都内のレーシック手術を行っている施設(14院)の平均費用:343,057円(両眼・税込 当社調べ 2025年8月調査時点)

レーシック手術の手術内容

レーシック手術は、大きく分けてフラップの作成エキシマレーザーの照射の2つの工程があります。

最初に、角膜の表層部にフラップと呼ばれる、術後に創部を覆う役割のある薄い蓋を作製します。従来はマイクロケラトームと呼ばれる電動カンナを用いてフラップ作製が行われてきましたが、近年はフェムトセカンドレーザーを用いてフラップ作製する施設が増えています。

次に、作製したフラップをめくり角膜実質層を露出させ、そこにエキシマレーザーを照射させます。ここで、角膜の形状に変化を与えることで、網膜に正しくピントが合うように屈折率を調整します。

最後に、傷が覆われるようにフラップを戻して、手術は終わります。

手術にかかる時間は数分程度で、点眼麻酔(目薬タイプの麻酔)を行います。

術後1週間は、抗菌薬や抗炎症薬の点眼をしながら経過観察し、術後から翌日、1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年といった間隔で診察を行います。

レーシック手術では角膜の神経の一部を切断するため、術後に涙が出にくくなり、一時的なドライアイになることがあります。

レーシック手術を受けられる人の条件

レーシック手術を受けるには、次の条件を満たしている必要があります。

  • 近視の強さが6.00D(※1)以下の軽~中等度の近視である(※2)
  • 遠視、乱視の場合は、その程度が6.00D以内である
  • 角膜の厚みが十分にあり、手術後に十分な角膜の厚みを残せる
  • 円錐角膜、またはその疑いがない
  • 活動性の外眼部炎症、白内障、緑内障および創部の治癒に影響するような疾患でない
  • 妊娠中または授乳中ではない

レーシック手術では、角膜にレーザーを当てて、角膜の厚みを調整することで屈折異常を矯正するため、レーシック手術を受けられる人の条件として、角膜の厚みが十分にあることは大前提となります。

また、屈折矯正手術のガイドライン(日本眼科学会)では、患者への十分な説明と、患者本人の同意があれば、6D以上の矯正を実施しても構わないとされていますが、6D以上の矯正を行う場合、術後に近視の戻りが起きやすく、高い視力の長期的な維持が得られない可能性があります。

そのため、6D以上の近視矯正を希望する場合は、レーシック手術よりも、角膜の厚みに手を加えることなく矯正が可能なICL(眼内コンタクトレンズ)手術が推奨されています。

※1 D(ジオプトリー)とは、近視の程度を表す単位であり、弱度近視は-3.00D以下、-3.00Dから-6.00以下は中等度近視、-6.00Dを超えると強度近視と分類されます。

※2 レーシック手術の矯正量の限度は、屈折矯正手術のガイドライン(日本眼科学会)にて、原則として6Dの範囲と定められています。(6D以上の矯正をする場合は、慎重な実施を要する)

レーシック手術にかかる費用

レーシック手術は、公的医療保険の適用外のため、手術にかかる費用の全額が患者による自己負担になります。また、レーシック手術は、高額療養費制度の対象外でもあります。

レーシック手術の費用は、手術を提供する各施設によって自由に決められています。

レーシック手術の費用の相場は、地域によって多少前後しますが、両眼あわせて平均税込35万円程度です。(※)

数万円代といった価格で手術を行う施設もあれば、上述した数字よりも高い価格で手術を行う施設もありますが、これは術中に使用する機器の違いなどにより前後します。

例えば、フラップ作成時に使用する機器に、マイクロケラトームと呼ばれる電動カンナを使う場合は、近年の主流となっているフェムトセカンドレーザーを使う場合よりも、低価格に設定されている場合などがあります。

また、術後の定期検診にかかる費用が含まれている場合が多いです。

※ 東京都内のレーシック手術を行っている施設(14院)の平均費用:343,057円(両眼・税込 当社調べ 2025年8月調査時点)

ICL(眼内コンタクトレンズ)の特徴

ICL(※)とは、眼内レンズを使った屈折矯正手術の1種です。

正しくは、STAAR Surgical Company(スターサージカル社・アメリカ カリフォルニア州)が製造・販売している後房型有水晶体眼内レンズの名称です。

また、現在主流となっているICLは、レンズ移植後に房水(眼内の水)の流れを妨げないようにレンズの中心に極小の穴が開けられているためホールICLなどと呼ばれることもあります。

現在は世界75カ国以上で販売され、累計300万本以上のレンズが使用されています。

※ Implantable Collamer Lens(または Implantable Contact Lens)の頭字語

手術内容目の中に小さなレンズを入れて、視力を矯正
矯正範囲強度近視(-6.00D以上 ※2)
推奨年齢(※1)21〜45歳
手術費用相場66万円(※3)
メリット手術後も必要に応じて取り外しが可能
デメリット目にレンズを入れるため、格闘技などの激しいスポーツをする人には不向き
向いている人・強い近視の人

・レーシックの適応検査で不適となった人

・すでにレーシック手術を受けている人

※1 日本眼科学会によるガイドライン上での推奨年齢(適応可否は医師の判断による)

※2 -3D〜-6Dおよび -15D以上は慎重に判断。実臨床の上限目安は-18D(適応可否は医師の判断によります)

※3 東京都内のICL手術を行っている施設(34院)の平均費用:656,410円(両眼・乱視なし・税込 当社調べ 2025年8月調査時点)

ICL手術の手術内容

ICL手術は、最初に約3mmの切開創をつくり、そこからCollamer®︎(コラマー)という、コラーゲンを含む非常に生体適合性の高く柔らかい素材でできたレンズを挿入し、虹彩と水晶体の間にはめる手術です。

ICL手術にかかる時間は、両目合わせて約20分程度で日帰り手術となります。また、点眼麻酔(目薬タイプの麻酔)を使用して行われるため、個人差はありますが、術中に痛みはほとんどありません

手術直後から、術前と比べてある程度の視力回復が見られ、院内のリカバリールームで数時間休んだのち、帰りは裸眼で帰宅することができます

レーシック手術との違いに、術後にドライアイになりずらいことが挙げられます。

ICL手術を受けられる人の条件

ICL手術を受けるには、次の条件を満たしている必要があります。

  • 近視の強さが6.00D以上15.00D未満の強度の近視である(※1)
  • 進行性円錐角膜でない
  • 活動性の外眼部炎症、白内障、緑内障および創部の治癒に影響するような疾患でない
  • 妊娠中または授乳中ではない

ICL手術では、目の中に小さなレンズを入れて視力を矯正するため、レーシックと異なり角膜の厚みにかかわらず手術を受けることが可能です。

そのため、進行性円錐角膜でなければ、慎重な実施を要しますが軽度の円錐角膜の人でも手術を受けられます

またICL手術は、角膜を削る必要がないことから強度近視の人にも施術が可能なため、レーシック手術の術前検査(適応検査とも呼ぶ)の結果、レーシックに不適と判断された人でもICL手術な可能なことが多いです。

※ 円錐角膜...角膜が薄くなり、薄くなった部分が眼圧に耐え切れなくなって前方に突出してくる眼疾患。円錐角膜|冨田実アイクリニック

※1 6D未満および15D以上の矯正をする場合は、慎重な実施を要する

ICL手術にかかる費用

ICL手術の費用も、レーシックと同様に公的医療保険および高額療養費制度の適用外であり、手術にかかる費用の全額が患者による自己負担になります。

そのため、ICL手術の費用は、手術を提供する各施設によって自由に決められており、費用の相場は、地域によって多少前後しますが、両眼あわせて平均税込66万円程度です。(※)

乱視をもつ人は、さらに10万円程度の追加費用がかかることが多いです。

また、近視の度数や遠視の有無によって追加費用がかかる場合が多く、事前検査の後に最終的な費用が確定する場合がほとんどです。多くの施設では、術後の定期検診代は手術費用に含まれています

※ 東京都内のICL手術を行っている施設(34院)の平均費用:656,410円(両眼・乱視なし・税込 当社調べ 2025年8月調査時点)

どんな人にレーシック・ICLは向いてる?

ここまで、レーシック(LASIK)とICL(眼内コンタクトレンズ)の基本的な施術内容から費用に至るまで解説しました。

どちらの手術も、臨床試験によって日本国内で認可されている安全性の高い屈折矯正方法です。

ここからは、それぞれの得意領域を踏まえた、レーシックに向いている人ICLに向いている人の特徴を解説します。

レーシックが向いている人

  • 矯正量が6Dの範囲内にある人(軽い近視の人)

レーシック手術は、矯正可能な範囲や、手術を受けられる人の条件がICLよりも厳しいですが、ICL手術よりも手術費用が安いです。

そのため、術前検査の結果、レーシック手術を無理なく実施できると判断された人であれば、ICL手術よりも、レーシック手術を受けるとよいでしょう。

ICLが向いている人

  • 矯正量が6Dを超える人(強い近視の人)
  • レーシックの適応検査で不適となった人
  • すでにレーシック手術を受けている人

ICL手術は、レーシックよりも矯正可能な範囲が広く、手術を受けられる人の条件も少ないですが、レーシックの2倍程度の費用がかかります。

そのため、ICL手術は、術前検査によってレーシック手術の実施が厳しいと判断された人に向いています。

またICL手術は、過去にレーシック手術をしたことがある人であっても受けることが可能なため、すでにレーシック手術を受けたことがあるものの、近視の戻りが起きてしまい、もう一度視力矯正を希望する人にも向いています。

参考文献

この記事の監修医師

医療法人社団 慶月会 経堂こうづき眼科・経堂白内障手術クリニック 院長 / 王子さくら眼科 理事長

上月 直之 医師

▼プロフィール

神戸大学工学部 情報知能工学科を卒業後、岡山大学医学部 医学科へ入学。卒業後は横浜市立市民病院での初期研修を経て、慶應大学病院 眼科学教室へ入局。その後、済生会中央病院 眼科、鶴見大学歯学部附属病院 眼科学教室 助教を務めたのち、2018年10月に経堂こうづき眼科を開院。2021年2月には王子さくら眼科を開院し、現在に至る。

YouTubeチャンネル:眼科医 上月直之

経堂こうづき眼科 院長|上月 直之 医師
経堂こうづき眼科 院長|上月 直之 医師

出典:https://www.kozuki-eyeclinic.com